司法書士が弁護士と同様に他人の代理人となって活動していることについては,過払い金請求などで一応は認知されているものの,まだまだ広く知られているとはいえません。
そこで,今回は司法書士の代理権に関する法的根拠を少しまとめておきます。

司法書士の代理権の法的根拠

司法書士の代理権は,平成14年の司法書士法改正により認められるようになりました。
改正以前の司法書士は,登記申請の代理や,訴状等の裁判所提出書面の作成を業務として活動していましたが,改正により,原則として簡易裁判所の扱う範囲内の法律事件に限り他人の代理人となって活動出来ることとなりました(簡裁代理権と呼ばれています)。ただし,これは全ての司法書士に認められるわけではなく,特別研修という法定の研修を受けた後に認定考査という試験を受け,法務大臣の認定を受けて初めて簡裁代理権が付与されます。これは認定司法書士と呼ばれています。

では認定司法書士が扱える簡裁代理権とはどういうものなのでしょうか。

まずは司法書士法の条文を示します。

司法書士法(昭和二十五年五月二十二日法律第百九十七号)
第三条 抜粋
六  簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第二百七十五条 の規定による和解の手続又は同法第七編 の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節 の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法 (平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目 の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
七  民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。

条文に作りがやや複雑ですので慣れていない方にとっては非常に読みにくいのですが,要約すると簡易裁判所における裁判手続きや,裁判外の紛争について訴訟の目的の価額が裁判所法に定める額(140万円)を超えないものの代理が可能と書いてあります。

司法書士は,これを根拠に代理業務を行っているのです。

家賃滞納や建物明渡請求事件に当てはめてみると

司法書士が扱う事件の範囲は140万円以内であるということは既にご説明しました。

では,その140万円というのはどこの金額で判断するのでしょうか。
家賃滞納の場合と,建物明渡しの場合に分けてご説明します。

家賃滞納の場合

家賃の滞納額がそのまま当てはまります。

例えば家賃10万円の物件を12ヵ月滞納していた場合は120万円ですから140万円の範囲に収まり,司法書士が事件を取り扱うことが出来ます。
なお,遅延損害金を含めて請求する場合でもそれは附帯請求と呼ばれており,上記の金額には算入しません。
したがって,例えば上記の例でいえば家賃滞納額が120万円で遅延損害金が30万円,合計150万円の請求であっても司法書士は賃料請求事件の代理人となることができます。

建物明渡しの場合

滞納家賃の額ではなく,建物の固定資産税評価額の2分の1で判断されます。
したがって,建物明渡請求については,建物の固定資産税評価額が280万円以下のものを司法書士が事件として取り扱うことができます。
例えば東京都内の共同住宅(鉄骨造・専有面積30㎡・築10年)の場合,固定資産税評価額はおよそ250万円であり司法書士の代理権の範囲に収まります。
築年数がそれなりに経過している単身者向けの物件であればほぼ司法書士の代理権の範囲内であるといえます。

建物明渡しと同時に滞納賃料の支払いも請求する場合

滞納家賃の額ではなく,建物の固定資産税評価額の2分の1で判断されます。
したがって,建物の固定資産税評価額が280万円以下のものを司法書士が事件として取り扱うことができます。
なお,滞納賃料については附帯請求となりますから滞納賃料の額はいくらであっても問題となりません。
例えば,固定資産税評価額280万円,滞納賃料の額200万円の物件の建物明渡請求及び賃料請求については司法書士が代理することが可能です。

以上,今回は司法書士の代理権について簡単にご紹介しました。
司法書士の代理権の範囲というものは一般の方には分かりにくいものかもしれませんね。

この代理権の範囲につき過敏に反応するのは司法書士自身か業際問題にうるさい弁護士くらいのものでしょう。

しかし,ご相談の際に「訴額はいくらか」などと気にして頂く必要はありません。
家賃滞納でお困りの方はまずは一度弊所の無料相談をご利用ください。
弊所司法書士が適切なアドバイスを行い,大家様の抱える問題に対応致します。

なお,代理権の範囲を超えている事件(ファミリー向け物件や高級賃貸物件,オフィス用賃貸物件)については適宜弁護士をご紹介させて頂くか,訴状などの書類作成により事件に関与させて頂いております。