家賃滞納をなんとかしたい,しかし通常の裁判を起こすまでではないという状況のときに意外に役に立つことがあるのが支払督促という制度です。

支払督促とは,簡易裁判所(裁判所書記官)が債務者に対して金銭等の支払いを命じる制度です(民事訴訟法382条以下)。

裁判所から滞納者に文書が届いて「家賃を支払え」とやってくれるため,相手によってはかなりの効果を上げます。

が,もちろん万能というわけではなく,メリットデメリットがありますのでご紹介しましょう。

家賃滞納問題に支払督促を利用するメリット

ではまずメリットから。

印紙代が安い

通常の裁判の半額の印紙代で済みます。
例えば50万円の請求の通常の裁判を起こすと印紙代は5000円ですが,支払督促だと2500円でいいのです。

裁判所に出向かなくても良い

通常の裁判だと原告側は出廷しなければなりませんが,支払督促は債務者から異議が出なければ郵送のみで完結します。

書面の作成が簡単

通常の裁判だと,訴状や準備書面など種々の書類を作る必要が出てきますが,支払督促では原則申立書を作成するだけで済みます。
また,申立書も裁判所にひな形があったりするので大家さんご自身でも比較的簡単に手続きを行うことが出来ます。

家賃滞納問題に支払督促を利用するデメリット

では次にデメリットです。

建物明渡請求には使えない

支払督促は金銭等の請求にしか使えないので,建物明け渡しには使えません。

相手から異議が出ると通常の訴訟に移行する

債務者が異議を申し立てると(督促異議といいます)手続きは通常の訴訟に移行してしまいます。
この督促異議は,裁判所から届いた様式の書面に異議ありとだけ書いて出しても有効なので誰でも簡単に出来てしまいます。
ですから,裁判所からの書類を無視せずに異議を出してきそうな相手の場合は,支払督促は時間の無駄ですので使えないと思ったほうが良いでしょう。

以上,今回は支払督促のメリットデメリットについてご紹介しました。

建物明渡訴訟を起こす前段階で,相手にプレッシャーを与える手段としては支払督促は有効なのではないかと思います。

例えば2ヶ月程度の滞納を繰り返してのらりくらりと逃げ回っている滞納者に対して支払督促を行うと以後滞納がなくなったり,裁判所から書面が届いたことによって観念して明け渡しの任意交渉が出来たりすることがありますので,滞納の際に取り得る手段のひとつとして覚えておいて損はないと思います。